可惜夜
【あたらよ】

明けてしまうのが惜しいくらいすばらしい夜

玉響
【たまゆら】

ほんのわずかの間

待つ宵
【まつよい】

来るはずの人を待っている宵

栗花落
【つゆり】

梅雨入りの当て字(梅雨入りが栗の花が散る時期にあたることから)。姓にも使われる。

鞦韆
【しゅうせん】

ブランコの漢語。古代中国では寒食の節(冬至から105日目)に宮廷の女性たちがブランコ遊びに興じる行事があり、春の風物詩として漢詩に詠まれるようになった。古語は「ふらここ」。

「鞦韆は漕ぐべし 愛は奪うべし」(三橋鷹女)
雪月花
【せつげつか】

唐の詩人・白居易の詩句「雪月花時最憶君(雪月花のとき 最も君を憶(おも)ふ)」による語。冬の雪と秋の月と春の花。四季折々の景物。

遣らずの雨
【やらずのあめ】

帰ってほしくない人を引き留めるかのように降ってくる雨

恋教え鳥
【こいおしえどり】

セキレイの異名。イザナギとイザナミの二神がセキレイを見て夫婦の交わり方を知ったという神話による。恋知り鳥ともいう。

月人壮子
【つきひとおとこ】

月で桂の木を切る人、または七夕の夜に彦星を乗せて天の川を渡る渡し守。

「天の海に月の舟浮け桂楫(かつらかじ)懸けて漕ぐ見ゆ月人壮士」(万葉集、詠み人知らず)
月の舟
【つきのふね】

上弦の月のこと。形が舟を連想させることから。

「天の海に雲の波立ち月の舟 星の林に漕ぎ隠る見ゆ」(万葉集、柿本人麻呂)
月夜見・月読み
【つくよみ】

月の神。古事記ではイザナギが黄泉の国のけがれをすすいだときに生まれたとされる。天照大神の弟。

「月読の光に来ませ あしひきの山も隔りて遠からなくに」(万葉集、作者不詳)月の光を頼りに逢いに来てください。あしひきの山が隔てるような遠い道ではないのですから
春愁
【しゅんしゅう】

春の季節になんとなく気がふさいで、ものうくなること。または思春期に抱く感傷的な気持ち。

「眺めて居ると少年心(こどもごころ)にも哀しいような楽しいような、所謂春愁でしょう、そんな心持になりました」(国木田独歩「運命論者」)
つらつら椿
【つらつらつばき】

葉と葉の間に連なったように咲いている椿の花のこと。万葉集の有名な和歌「巨勢山(こせやま)の つらつら椿 つらつらに 見つつ偲(しの)はな 巨勢の春野を」(坂本人足)より。

恋蛍
【こいぼたる】

恋い慕う気持ちを蛍の光に例えた言葉

夕星
【ゆうつづ】

夕暮れ、西の空に見える金星

「夕星も通ふ天道をいつまでか仰ぎて待たむ月人壮人(つきひとおとこ)」(万葉集、柿本人麻呂)
夢見鳥
【ゆめみどり】

蝶の異名。「胡蝶の夢」の故事に由来する。夢虫ともいう。

胡蝶の夢
【こちょうのゆめ】

中国の思想家・荘子が蝶になって舞う夢から覚めたあと、果たして自分が蝶になった夢を見たのか、それとも今の自分は蝶の夢の中なのかわからなくなったという故事(『荘子』斉物論)から生まれた言葉。現実と夢との境目があいまいであること、あるいははかない人生のたとえに使われる。

「散る花や 胡蝶の夢の 百年目」(松永貞徳)
虫時雨
【むししぐれ】

秋の虫がいっせいに鳴く声を時雨になぞらえた語

「虫時雨銀河いよいよ撓(たわ)んだり」(松本たかし)
花笑み
【はなえみ】

花が咲くこと、または咲いた花のような微笑み

桜狩
【さくらがり】

桜の花を求めて歩きまわること。

花氷
【はなごおり】

花を入れて凍らせた氷柱。

岸田稚魚「少年の恋花氷痩せてあり」
寒紅
【かんべに】

寒い時期に作られた紅。色が鮮やかで美しいとされる。

寒紅や心の闇は覗かれず/鈴木真砂女
空蝉
【うつせみ】

この世の人、現世。古語の「現臣(うつしおみ)」が万葉集で「空蝉」の字をあてられたことから、セミの抜け殻の意味にも使われるようになった。

糸遊
【いとゆう】

春の暖められた空気が糸が遊ぶようにゆらゆら立ち上ること。陽炎(かげろう)の別称。

松尾芭蕉「糸遊に結びつきたる煙かな」
目借時
【めかりどき】

春の陽気にうとうとすることを人の目を借りに来た蛙のせいにする言葉

獺祭
【だっさい】

カワウソが捕まえた魚類を川岸に並べるさまを祭りにたとえた言葉。「獺(かわうそ)魚を祭る」の短縮形。俳人の正岡子規は書斎に本を並べるさまが獺祭に似ているとうことで、「獺祭書屋(しょおく)主人」という別号を持つ。

正岡子規「獺の祭を画く意匠かな」
凍蝶
【いてちょう】

寒さで凍ったように動かずにいる蝶

高浜虚子「凍蝶の己が魂追うて飛ぶ」
ふくら雀
【ふくらすずめ】

寒さを防ぐために雀が羽毛をふくらませて丸くふくれている様子

かじけ猫
【かじけねこ】

寒さでちぢこまり、温かい場所でじっとしている猫。

竈猫
【かまどねこ】

寒さのあまりかまどにもぐって灰だらけになる猫

「何もかも知つてをるなり竈猫」(富安風生)
炬燵猫
【こたつねこ】

こたつで丸くなる猫

「薄目あけ人嫌ひなり炬燵猫」(松本たかし)
うかれ猫
【うかれねこ】

恋に夢中になって鳴きながら浮かれ歩く猫

「火の上を上手にとぶはうかれ猫」小林一茶
春告鳥
【はるつげどり】

ウグイスの別名。

百千鳥
【ももちどり】

春に来るたくさんの鳥

中村草田男「百千鳥もっとも烏(からす)の声甘ゆ」
亀鳴く
【かめなく】

実際に亀が鳴くことはないが、春になるとなんとなく鳴きそうだということで古くから俳句などに使われている不思議な季語。鎌倉時代の和歌「川越のをちの田中の夕闇に何ぞと聞けば亀のなくなり」(藤原為家)が典拠とされる。

内田百閒「亀鳴くや夢は淋しき池の縁」
月代
【つきしろ】

月が出る直前、東の空が白々と明るく見えること

松尾芭蕉「月しろや膝に手を置宵の宿」
斑雪
【はだれ】

まだらにうっすら降り積もった雪

風光る
【かぜひかる】

春の光を浴びてキラキラ輝いているように感じられるやわらかい風

「風光る入江のぽんぽん蒸気かな」(内田百間)
花曇
【はなぐもり】

桜が咲くころの明るく曇った空模様。

「花曇朧につづく夕べかな」(与謝蕪村)
五月闇
【さつきやみ】

梅雨が降る頃の暗さ

「夜も昼もうつうつらと五月闇」(正岡子規)
風薫る
【かぜかおる】

若葉の間を吹きぬける爽やかな風

「その人の足あとふめば風かをる」(正岡子規)
初時雨
【はつしぐれ】

その年の冬に初めて降る時雨

「初しぐれ猿も小蓑をほしげなり」(松尾芭蕉)
しずり
【】

木の枝に降り積もった雪が落ちること

六花
【りっか、むつのはな】

雪の異名

天花
【てんか】

雪の異名

三つの花
【みつのはな】

霜の結晶

風花
【かざはな】

晴れた日に花びらのように風に舞う雪

友待ち雪
【ともまちゆき】

次の雪が降るまで解けずに残っている雪

「春の日のうららに照らす垣根には 友待ち雪の消えがてにする」(続後撰和歌集・藤原俊成)
沫雪
【あわゆき】

沫のようにやわらかく消えやすい雪

「沫雪のほどろほどろに降りしけば平城(なら)の京師(みやこ)し思ほゆるかも」(万葉集・大伴旅人)
初霞
【はつがすみ】

新春にたなびく霞

「星消えてあとは五色の初霞」(正岡子規)
秋去衣
【あきさりごろも】

秋になって着る衣服。牽牛、織女二星が七夕の夜着る衣。「織女(たなばた)の五百機(いほはた)立てて織る布の秋去衣誰か取り見む」(万葉集)

秋去姫
【あきさりひめ】

秋去衣を織る女。七夕の織女の別名。織女にはこのほか朝顔姫、薫姫(たきものひめ)、糸織姫、蜘蛛姫(ささがにひめ)、蜘蛛姫(ささがにひめ)、百子姫(ももこひめ)の合わせて7つの異称がある。

藻塩草
【もしおぐさ】

藻塩をとるために用いる海藻。掻き集める→書き集めるの連想からも、随筆や手紙を指すこともある。

雲母
【きらら】

六角板状の結晶をなす珪酸塩鉱物。光沢が強いのでこう呼ばれる。「うんも」とも読む。

薄ら氷
【うすらひ】

薄く張った氷

照り葉
【てりは】

紅葉して日光に照り映える葉

爽籟
【そうらい】

さわやかな秋風の響き

旻天
【びんてん】

秋の晴れた空

碧落
【へきらく】

青空、大空。転じて遠方。

凍玻璃
【いてはり】

凍り付いたようなガラス

玉蜻
【たまかぎる】

玉がほのかに輝くことから、「ほのか」「夕」「日」などにかかる枕詞。

「玉かぎるほのかに見えて別れなばもとなや恋ひむ逢ふ時までは」(万葉集、山上憶良)
残んの月
【のこんのつき】

明け方になっても残っている月

残んの雪
【のこんのゆき】

残っている雪

火点し頃
【ひともしごろ】

明かりをともす夕暮れ時

「火ともし頃より筆やが店に転がりて」(樋口一葉「たけくらべ」)
玉兎
【ぎょくと】

月の異名

細好男
【ささらえおとこ】

月の異名

「山の端のささらえをとこ天の原門わたるひかりみらしくよしも」(万葉集、大伴坂上郎女)
帰花
【かえりばな】

春に咲く花が冬に返り咲くこと。

「物すごやあら面白や帰り花」(上島鬼貫)
花奢
【きゃしゃ】

上品で優雅なさま。風流。伊達(だて)。

消え惑う
【きえまどう】

死ぬほどに思い迷う。「消え惑へる気色 (けしき) いと心苦しくらうたげなれば」(『源氏物語』帚木)